子どもたちに、覚えさせてあげたい。
REPETAを作りながら、私の中にずっとあったのは、その思いだった。
漢字がなかなか覚えられない。何度書いても、しばらくすると忘れてしまう。苦手意識が先に立ち、机へ向かうこと自体がつらくなる。そんな子どもたちを身近で見てきた。
覚えられないのは、本人の頑張りが足りないからなのだろうか。
私は、そうは思わなかった。
一度に覚えようとするのではなく、忘れる前提で何度も戻ってこられること。頑張った時間が目に見えて、明日もまたやってみようと思えること。子どもの意志の強さだけに任せず、続けること自体を助ける仕組みがあれば、もっと覚えられるはずだ。
私が最初から大切にしてきたのは、二つだった。
どうすれば学習を続け、良い習慣にできるのか。
どうすれば記憶の仕組みに沿って、本当に覚えられるのか。
REPETAは、この二つの問いへ答えようとして育ててきた学習アプリだ。
始まりは、小さな暗記カードだった
子どもが続ける姿を見ながら、ご褒美、間隔反復、漢字、学校モードを一つずつ加えていった。
- 暗記カードできた/まだ曖昧を分ける
- ご褒美・継続ブースト毎日戻ってくる理由
- 間隔反復・漢字書き取り忘れる前提で覚え直す
- 学校モード27,057項目
最初に作ったのは、覚えたい言葉を登録し、できたものと、まだ曖昧なものを分ける小さな暗記カードだった。
そこへ、頑張ったら小さなご褒美がもらえる仕組みを加えた。
すると、子どもたちが毎日のようにアプリへ戻ってくるようになった。昨日の続きを楽しみにしながら、自分から学習を始める。勉強を促される前に、アプリを開いている日もあった。
その姿をそばで見ながら、私は思った。
ご褒美は、学習の外側にある飾りではない。学び始めるきっかけになり、続けた時間を目に見える形で残し、次の日の一歩へつなげられる。
この実感が、REPETAの発想を大きく広げた。よくできた暗記カードを作るのではなく、子どもが学び続けられる循環そのものを作ろう。そこから、今日の学習、復習、テスト、記録、モンスター育成が一つずつ加わっていった。
続けることを、子どもの根性に任せない
始める、学ぶ、できたと感じる、また戻ってくる。この一段ずつを、明日へつなげる。
- 01始める今日のお品書き
- 02学ぶ新規・復習・確認
- 03できたと感じる記録・お肉・育成
- 04また戻ってくる翌日の一歩
家庭学習で難しいのは、内容そのものだけではない。
今日は何をするのか。昨日覚えたものは、いつ復習するのか。新しい問題へ進むのか。テストをするのか。毎回それを子ども自身が決めなければならないと、学習を始める前に疲れてしまう。
REPETAには、その日に取り組む内容をまとめる「今日のお品書き」がある。新しく学ぶもの、復習するもの、確認するものを同じ一日の導線へ並べ、アプリを開いたら次の一歩が分かるようにした。
学習が終われば、頑張った記録が残る。テストで手に入れたお肉をあげると、庭のモンスターが育つ。そして翌日には、新しい学習と復習が、もう一度「今日やること」として待っている。
始める。学ぶ。できたと感じる。また戻ってくる。
良い習慣が一つ増えると、人生は少しずつ良い方向へ動く。これは、私が以前から大切にしている考えでもある。
だからREPETAでは、一回だけたくさん勉強させることより、明日も始められることを重視した。「毎日やりなさい」と言う代わりに、毎日やりたくなる理由と、迷わず始められる入口を作りたかった。
習慣形成には個人差があり、アプリを入れれば誰にでも習慣が身につくと約束できるものではない。成人を対象にした研究でも、自動性が高まるまでの期間は人によって大きく異なる。ただ、その違いがあるからこそ、連続日数の数字だけで競わせず、次の一回へ戻りやすい環境を丁寧に作る意味がある。
続けた日々を、次の楽しみに変える
3日ごとに継続ブーストが上がり、レアな卵と出会える確率も上がる。
- 3日Boost 1レア度 わずかに上昇
- 6日Boost 2レア度 上昇
- 9日Boost 3レア度 大きく上昇
- 継続中Boost MAXレアな卵と出会いやすい
初期の暗記カードで、ご褒美を楽しみに子どもたちが毎日続ける姿を見た。その経験から、報酬の仕組みも一度きりの演出では終わらせなかった。
REPETAには「継続ブースト」がある。毎日学習すると連続日数が積み上がり、3日続くごとにブーストが一段上がる。段階が上がるほど、育成でレアな卵と出会える確率が高くなる。
この仕組みを加えてから、子どもたちは自分の連続日数と次の卵を楽しみにしながら、以前にも増して毎日学習を続けるようになった。
ただ「連続○日」と表示するだけではない。続けてきた時間が、次の楽しみへ実際につながる。昨日頑張ったから、今日は少し良い出会いがあるかもしれない。その期待が、またアプリを開くきっかけになる。
学習が終わるとお肉を受け取り、そのお肉でモンスターを育てる。卵から生まれ、成長し、進化し、図鑑へ新しい物語が加わる。子どもが頑張ったことを、正解数だけでなく、自分の手で育てた存在として残したかった。
報酬は、与え方によっては学ぶこと自体への関心を弱める可能性もある。だからREPETAでは、点数や他人との順位で圧力をかけるのではなく、自分が続けた時間を、自分の世界が育つ喜びへ変えることを大切にした。
モンスターが暮らす世界や、学習が冒険へ変わっていく実際の画面は、REPETA公式ページ「今日のひとつが、冒険になる。」で見ることができる。
忘れることを前提に、「覚えるループ」を作る
SM-2を土台に、できた内容は間隔を広げ、難しかった内容は早めに戻す。
- 難しかった内容 → 早めに復習
- できた内容 → 少し先に復習
- 得意な内容 → 間隔を広げて復習
もう一つ、REPETAで同じくらいこだわったのが記憶のメカニズムだ。
一度覚えたはずなのに、翌日には思い出せない。それは失敗ではない。人は忘れる。だから、忘れないことを求めるのではなく、忘れかけた頃にもう一度思い出せる仕組みを作ればいい。
時間を空けて学び直す分散学習には、長期的な記憶保持を助けうる研究の蓄積がある。REPETAは、間隔反復で広く知られるSM-2を土台にしながら、意味と綴りを別々に扱う仕組み、復習間隔の上限、確認テストとマスターテストの違いなどを加えた独自のスケジュールを実装した。
学ぶ。少し時間を空ける。思い出す。答えを確かめる。その結果を、次の復習時期へ返す。
できた内容は次の間隔へ進み、難しかった内容は早めに戻ってくる。子ども自身が大量のカードと日付を管理しなくても、一つひとつの記憶に合わせて「今日やる分」が現れるようにした。
カードを眺めるだけでは、「見れば分かる」と「自分で思い出せる」の違いに気づきにくい。そこで、4択、綴り、漢字の書き取り、定期テスト、マスターテストなど、覚えた内容を自分の中から取り出す複数の場面も加えた。
分散学習や想起練習の研究が、REPETAそのものの教育効果を証明しているわけではない。けれど、「忘れたから叱る」のではなく、「思い出せる時期にもう一度出会わせる」という設計には、記憶研究から学べる理由がある。研究は製品を飾るためではなく、子どもに本当に覚えてもらう方法を考えるために使った。
漢字が苦手な子を見て、書き取り機能を育てた
学年別の漢字を選び、書き順と字形を確認し、お手本なしのテストで記憶を確かめる。
- 01学年別に選ぶ学校で習った字
- 02書き順を確認KanjiVGデータ
- 03字形を採点正しい形で書けたか
- 04書く回数を選ぶ1351020
- 05お手本なしでテスト自分の記憶から書く
- 06復習時期へ記録できた字は間隔を空ける
REPETAの中でも、漢字の機能は特に大きく広がった。
理由は単純だ。漢字を覚えることに苦労している子どもたちを見て、なんとか覚えさせてあげたいと思ったからだ。
漢字は、答えを一度見て終わりにはできない。読みを知ることと、自分の手で正しい形を書けることも違う。何度も書けばよいと言われても、間違った書き順や形のまま繰り返していることもある。そして覚えたかどうかは、お手本を隠して書いてみなければ分からない。
そこでREPETAでは、学年ごとの漢字から学校で習った字を選び、その日の書き取りと復習へ乗せられるようにした。KanjiVGの筆順データを使って書き順を確認し、字形も採点する。親は一文字を書く回数を1・3・5・10・20回から選べる。練習が終われば、次に復習する時期が記憶のスケジュールへ記録される。
テストではお手本を消し、自分の記憶から一度書いてみる。できた字は間隔を空け、難しかった字は早めに戻す。練習、判定、復習、テスト、ご褒美までを、一つの「覚えるループ」としてつないだ。
収録範囲も、最初の小さな漢字デッキから、常用漢字2,136字へ広がった。数を誇りたかったからではない。どの学年の、どの漢字で困っている子にも、同じ仕組みを使ってほしかったからだ。
苦手だから避けるのではなく、今日できる分だけ取り組み、忘れたらもう一度戻り、少しずつ「書ける」へ変えていく。
漢字機能へ重ねた一つひとつの実装には、目の前で困っていた子どもたちの姿がある。
必要を追いかけたら、大きなアプリになった
公開中のREPETA、そのままの画面。今日のお品書き、クイズ、ご褒美、育成まで、ひとつの習慣としてつないだ。
暗記カードから始まったREPETAは、学校の学習へも広がっていった。
学校モードでは、学年と現在の単元を選び、国語、算数・数学、理科、社会、英語などを毎日の計画へ加えられる。今日学校で習った内容、少し前の復習、次へ進む準備を、ばらばらのアプリに分けず、同じ習慣と記憶の循環へ乗せるためだ。
提出済みの1.0.0 build 247には、341の学習パック、240の学校単元、学校向け14,752項目を含む合計27,057項目が収録されている。
最初の暗記カードから考えれば、ずいぶん大きなアプリになった。
けれど、最初から巨大なアプリを作ろうとしたわけではない。子どもが続ける姿を見て、もっと続けやすくした。忘れて困る姿を見て、復習の仕組みを深くした。漢字が覚えられず苦しむ姿を見て、書き順、字形、練習回数、テストまで作った。
増えた機能は、子どもたちを見ながら考え続けた軌跡でもある。
もちろん、大きくなったからこそ、迷いやすくなる危険もある。公開後も、どこで止まったか、どの説明が伝わらなかったか、何が続ける力になったかを聞き、増やすだけでなく減らすことも含めて育てていきたい。
無料で届けて、家庭と一緒に育てたい
学ぶ入口を狭めたくない。使いながらの感想を、次のREPETAへ返してもらう。
- ✕広告
- ✕アプリ内課金
- ✕アカウント登録
- ✕行動追跡
REPETAは、2026年8月19日にApp Storeで公開された。公開後も更新を重ね、2026年8月23日の公開時点ではバージョン1.0.1を無料配信している。
日本向けに無料で提供している。広告、アプリ内課金、アカウント登録、行動追跡は入れていない。学習データは端末内で扱い、App Storeのプライバシー表示も「データ収集なし」として申告している。
無料にしたのは、学ぶ入口をできるだけ狭めたくなかったからだ。一人でも多くの子どもと家庭に、役立ててもらいたい。
REPETAで作りたいのは、勉強を管理する道具だけではない。
昨日できなかったことが、今日は少しできる。忘れても、もう一度戻ればいい。続けてきた日々が、自分の力と、自分だけの世界として残っていく。
良い習慣が一つ増えることで、その子の明日が少し良くなる。
そのために、どうすれば続けられるのか。どうすれば本当に覚えられるのか。公開後も、使ってくれる子どもたちと家庭の声を聞きながら考え続けたい。
感想や要望は、contact@ediforce.co.jpまで。小さなことでも、聞かせてもらえたら嬉しい。
一次資料・研究
Cepeda et al. (2006) — Distributed practice in verbal recall tasks
Mawson & Kang (2025) — Classroom distributed-practice meta-analysis
Karpicke, Blunt & Smith (2016) — Retrieval practice in elementary school children
Karpicke et al. (2014) — Guided retrieval in elementary school children
Lepper, Greene & Nisbett (1973) — Extrinsic reward and intrinsic interest










