「この画像を直して」「この素材から動画を作って」。AIにそう頼んだあと、AI自身が制作アプリを使い、あとから人も手を加えられる形で作品を残してくれたら。そんな制作環境に興味がある。
今回試したCrafting Appsは、画像、図版、動画などを作るオープンソースのアプリ群だ。目を引いたのは、既存ソフトに似ていることよりも、AIが使うことを最初から考えた設計だった。
Macで動かしてみると、画像の編集も、音付き動画の書き出しもできた。ただし、まだ初期のアルファ版。今の制作環境を置き換えるには早い。それでも、更新を見守りたいと思える理由はあった。
Crafting Appsは、何を作れるアプリなのか
ArtCraftが公開しているCrafting Appsには、写真や画像を編集するPhotoCraft、図形や図版を作るVectorCraft、動画編集のFilmCraft、動く図形などを作るEffectCraftを含む七つのアプリがある。今回は、この四つを試した。
画像を重ねる、図形を描く、動画を並べる、図形を動かす。人が画面で操作できるだけでなく、AIからも編集の指示を渡せる。PhotoCraftの公式リポジトリには、アプリ群の概要も載っている。
興味を持ったのは、AIも使える「制作の道具」だったから
人向けのソフトをAIに使わせる場合、画面を見せてボタンの位置を探し、クリックしてもらう方法がある。人の操作を、AIが代わりに行うわけだ。
Crafting Appsは、その方法だけに頼らない。編集の命令を直接受け取る入口も用意している。人が画面から操作する場合も、AIが外から指示する場合も、同じ編集の仕組みを呼び出す設計だ。FilmCraftの公式説明で、その考え方が分かる。
たとえば、AIへ「この素材をここへ置いて」「この図形の色を変えて」と頼む場面を考える。画面のどこを押すかだけでなく、何を、どう編集するかをアプリへ伝えられる。このように、人とAIが一緒に使う前提の設計を、本稿ではagent nativeと呼びたい。
私自身、以前から動画生成AIなどを使った制作環境を試作してきた。現在の動画制作はRemotionに落ち着いているが、AIから操作しやすい制作アプリには、やはり惹かれる。AIが画像や動画を一発で出すだけでなく、「そこは残して、ここを変えたい」という修正に付き合える環境が欲しいからだ。
実際に試すと、画像も動画も作れた
EDIFORCEの検証担当が使ったのは、M4 Max・メモリ128GBのMac。検証版はv0.1.1で、素材には自作の図形、テスト画像、試験音を使った。四つのアプリを外から指示して操作し、PhotoCraftとVectorCraftでは画面も確認した。まずは小さな素材で、編集して保存し、完成ファイルを開くところまで確かめた。
PhotoCraftでは、二つのレイヤーを持つ画像を作り、アプリ独自の形式とPSDで保存した。PhotoCraftでもう一度開いても、レイヤーと画像の画素は保たれていた。Photoshop本体で開く試験はしていない。AI側からレイヤー名を変え、その変更が実際の画面へ反映されることも確認できた。

FilmCraftでは、音の付いた2秒の動画を書き出した。完成したMP4は24fps・48フレームで、全フレームを読み取れ、音声も入っていた。EffectCraftでは、図形を横へ動かす動画を作り、書き出した映像でも図形が移動していることを確かめた。
少なくとも、指示を受け取って「成功」と返すだけの状態ではない。小さいとはいえ、実際に使える画像や動画が手元に残った。
ただ、スムーズに任せられるわけではなかった
FilmCraftでは、動画を読み込んだあと、その素材から編集用のシーケンスを作ろうとしてエラーになった。原因は、読み込んだクリップを選択していなかったこと。選んでから同じ操作をすると、先へ進めた。

これは動画が壊れていたのでも、編集機能がなかったのでもない。人が使う時と同じように、AIにも「今、どの素材を選んでいるか」を扱ってもらう必要があった。接続さえすれば、何でも滞りなく作ってくれるわけではない。
EffectCraftでは、保存先を省略した書き方で渡すと、想定とは違うフォルダに動画が保存された。ファイル自体はできており、場所を確認して回収できた。検証では、以降の保存先をフルパスで指定する形に直した。
VectorCraftのPDFにも、用途によって気になる点があった。今回の英字入り図版は、PDFを開くと文字が見えるのに、文字の抽出結果は空だった。文字が輪郭の図形として出力されていたためだ。印刷して読むならよくても、検索やコピーが必要な資料では困る。この一つの試験から、すべてのPDFがそうなるとまでは言えない。

既存ソフトとの互換性にも注意が要る。EffectCraftは、公式にもAfter Effectsのプロジェクト形式である.aepや、そのプラグインには対応していないと説明している。公式の対応状況を見ても、今すぐいつもの仕事を移す段階ではなさそうだ。
なお、複雑なPSD、日本語の組版、長尺・4K動画は今回試していない。これらが「できなかった」という結果ではなく、まだ使えるかを確かめていない部分だ。
乗り換えるには早い。でも、この方向は応援したい
今のところ、日常の制作は既存の環境を使い続ける。小さなテスト素材が動いたことと、普段の制作を安心して任せられることは、やはり別だからだ。PhotoCraft自身も、まだ日常のプロ業務向けPhotoshop代替ではないと説明している。
それでも、Crafting Appsの出発点には可能性を感じる。人が使う道具をAIにも頑張って使わせるのではなく、最初からAIと一緒に使える道具を作る。その考え方は、これからの制作環境に合っていると思う。
欲しいのは、AIが「できました」と返した時だけでなく、そのあとも作品を育てられる環境だ。文字を差し替えたり、映像の一部だけを直したり、人の手でも続きを編集したり。そういう普通の修正が、無理なくできるようになってほしい。
制作環境にするには、まだ早い。しかし、可能性は感じる。今回の感想はそこに落ち着く。完成された代替ソフトとしてではなく、AIと作るための新しい道具として、今後の更新を見守っていきたい。


