水道管から水が漏れている。けれど、地面のどこを掘ればよいのかは分からない。地下の漏水探査は、壊れたものを見て直すだけでは済まない仕事だ。

NTTが10月21日に発表したのは、この「場所を探す」仕事を光ファイバとAIで助ける実証成果だ。福岡市内で福岡市管工事協同組合と共同実証し、地中の給水管から伝わる振動をもとに漏水位置を推定した。NTTの発表

NTTの説明によると、従来は人が音を聞いて漏水位置を推定し、その技術を身につけるのに数年を要した。今回の実証は、経験の浅い人にも、探すための手がかりを渡そうとするものだ。

道路の下を透視するのではなく、振動を読む

今回の対象は、水道管から分かれて宅地へつながる給水管。福岡市が9月に公表した実証計画によると、その管が埋まっている道路や宅地の地表に、光ファイバセンサを載せたマットを置く。管の中へカメラを通して穴を探す方法ではない。福岡市の実証計画

では、なぜ光で水漏れが分かるのか。

光ファイバは、通信だけでなく振動を測るセンサにもなる。振動で光ファイバがごくわずかに変形すると、中を進んだ光の散乱のしかたが変わる。その変化を調べると、どのあたりが揺れているかを読み取れる。これが、今回使われたDASというセンシング技術の基本だ。NTTによる技術解説

ただし、振動を拾えれば、それで水漏れを特定できるわけではない。NTTの技術解説でも、道路工事の機械など、屋外のさまざまな振動を見分ける難しさが挙げられている。

今回の漏水実証では、センサで計測した波形をAIが解析し、周囲と異なる特徴を持つ場所を推定する。光ファイバが地中の変化をデータにし、AIがそのデータから漏水らしい位置を探す、という組み合わせだ。

地表のマットで測った振動をAIで解析し、場所の候補を探す。編集部の模式図で、動きは実測波形や測定時間の再現ではありません。

地表のマットで測った振動をAIで解析し、場所の候補を探す。編集部の模式図で、動きは実測波形や測定時間の再現ではありません。

「88%」は、何を当てた数字なのか

NTTの発表では、深さ30〜120cmに埋まった給水管を対象に、実際の漏水位置から水平方向に75cm以内という条件で正解率88%だった。現場で振動を測る時間は5分、測定からAI解析までは約15分としている。

この数字は「水漏れをどんな条件でも見つけられる確率」ではない。位置のずれをどこまで認めるかを含んだ、今回の実証条件での結果だ。発表本文では試験件数や管種別の内訳が示されておらず、別の地域や設備でも同じ成績になるかは、今後の検証を見たい。

また、約15分は修理が終わるまでの時間ではない。漏水位置を調べる測定・解析の所要時間であり、掘削や修理工事まで自動化したという発表でもない。

NTTの2026年10月21日発表に基づく結果と条件。88%は水平75cm以内の位置推定。約15分は測定・解析までで、修理時間ではありません。

NTTの2026年10月21日発表に基づく結果と条件。88%は水平75cm以内の位置推定。約15分は測定・解析までで、修理時間ではありません。

経験が浅い人にも、探す手がかりを

福岡市の実証計画は、漏水箇所を特定できる熟練技術者が減り、探査技術の継承が課題になっていると説明している。AIを導入する理由が、単なる作業時間の短縮だけではないことが分かる。

経験を積んだ人しか分からなかった手がかりを、センサで記録し、別の人にも使える形へ変える。そこに、この研究の面白さがある。

もちろん、場所の候補が出たら現場の判断がすべて不要になるわけではない。今回も協同組合が給水管の情報を確認し、掘削によって実際の漏水位置を確かめている。AIの推定だけで結果を決めていないところも大切だ。

NTTは今後、精度や現場での使い勝手を改善し、水道事業者や自治体への展開を目指すとしている。今すぐ全国で使える製品が発売された、という段階ではない。

地面に置いたマットから、「次はこのあたりを調べよう」と手がかりが返ってくる。経験が浅い人にもそれが渡れば、熟練者のもとで覚える仕事の進め方も変わりそうだ。新しいAIの使い道は、画面の中だけにあるわけではない。水道を守る次の担い手につながる技術として、実用化までの歩みを追いたい。

出典

NTT:光ファイバセンシングとAIによる給水管漏水位置特定の実証成果(2026年10月21日)

福岡市:光ファイバセンシング技術を活用した漏水箇所特定の実証計画(2026年9月8日、PDF)

NTT R&D:光ファイバ環境モニタリング(2025年3月24日更新)